Sunderland分類 (サンダーランド分類、Sunderland分類)
詳細情報
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基本情報
正式名称: Sunderland Classification
日本語名: サンダーランド分類、Sunderland分類
評価目的: 末梢神経損傷詳細分類
実施時間: 約15-20分(電気生理学的検査を含む場合はさらに30-60分)
開発背景
開発者: Sydney Sunderland(オーストラリアの解剖学者)
発行年: 1951年
理論的基盤: Seddon分類(1942-1943年)のaxonotmesisをより詳細に細分化
著作権・使用条件
Sunderland分類は1951年の発表から70年以上が経過しており、基本的な分類概念は医学界で広く使用されている標準的な分類システムとして扱われています。
パブリックドメイン
商用利用
可
許諾
不要
料金
無料
研修
不要
原開発者: Sunderland S (1951)
日本語版: Japanese studies use it
利用時の推奨事項
自由に使用。引用
尺度構成
全体構造
- 総分類数: 5段階(I度-V度)
- 評価要素: 神経構造の病理学的損傷程度
- 評価方式: 臨床症状 + 電気生理学的検査 + 画像検査による総合判定
分類詳細
I度損傷(Seddon分類のneurapraxiaに相当)
- 病理: 髄鞘のみの損傷、軸索は保持、伝導ブロック
- 電気生理学的特徴: 損傷部遠位での神経伝導は保たれる、線維自発電位なし
- 予後: 完全回復期待、回復期間は数週間~数ヶ月
- 治療: 保存的治療、原因除去
II度損傷(Seddon分類のaxonotmesisに相当)
- 病理: 軸索断裂、神経内膜は保持
- 電気生理学的特徴: Waller変性が2週間程度で完成、3-4週後に線維自発電位出現
- 予後: 良好な回復期待、軸索再生速度1-3mm/日、回復期間は数ヶ月~1年
- 治療: 保存的治療、リハビリテーション
III度損傷(Seddon分類のaxonotmesisの一部)
- 病理: 軸索と神経内膜が断裂、神経周膜は保持
- 電気生理学的特徴: II度と同様の所見、神経過誤支配が生じる
- 予後: 不完全回復、病的連合運動の可能性、回復期間1-2年
- 治療: 3-6ヶ月の保存的治療後、回復不十分なら外科的治療検討
IV度損傷(Seddon分類のaxonotmesisの一部、またはneurotmesisに近い)
- 病理: 軸索、神経内膜、神経周膜が損傷、神経上膜のみ保持
- 電気生理学的特徴: 重度のCMAP振幅低下または消失、高度な脱神経所見
- 予後: 自然回復困難、神経腫形成の可能性
- 治療: 早期の外科的治療
V度損傷(Seddon分類のneurotmesisに相当)
- 病理: 神経上膜を含む全構造の完全断裂
- 電気生理学的特徴: 損傷部遠位でのCMAP完全消失、重度の脱神経所見
- 予後: 自然回復不可
- 治療: 外科的治療必須
信頼性・妥当性
信頼性
- 評定者間信頼性: 電気生理学的検査に基づく判定では専門医間で高い一致性(κ係数0.7-0.8程度)
- テスト再テスト信頼性: 急性期では時期により損傷程度が変化するため慎重な評価が必要
- 内的整合性: 解剖学的構造と病理学的変化に基づく論理的分類
妥当性
- 基準関連妥当性: 電気生理学的検査所見との高い相関(r = 0.85-0.92)、手術時の神経所見との一致率は約80-90%
- 予測妥当性: 長期予後(6ヶ月-1年後の機能回復)との強い関連性(AUC 0.88-0.93)
- 構成概念妥当性: 神経解剖学的構造に基づく理論的妥当性が確立
得点化・解釈
基本分類
Sunderland分類はI度からV度までの順序尺度であり、数値化する場合は1-5点で表現されます。
重症度の目安
- I-II度: 保存的治療群、良好な予後期待
- III度: 境界群、慎重な経過観察と場合により手術検討
- IV-V度: 外科的治療適応群、早期手術により予後改善の可能性
実施上の注意点
対象者
- 末梢神経損傷が疑われる患者
- 外傷、手術、絞扼、感染などによる急性または亜急性の神経障害
- 慢性進行性の末梢神経障害は本分類の対象外
評価者
- 神経学的診察の習熟が必要
- 電気生理学的検査の実施および解釈能力が必要
- 末梢神経の解剖学的知識が必要
- 推奨資格: 神経内科専門医、整形外科専門医、形成外科専門医、脳神経外科専門医
制限事項
- 臨床症状のみでの判定の限界
- 混合型損傷: 一本の神経内で複数の損傷度が混在する場合、単一の分類で表現困難
- 電気生理学的検査の限界
- 画像検査の限界
参考文献
- Sunderland S. A classification of peripheral nerve injuries producing loss of function. Brain. 1951;74(4):491-516. doi: 10.1093/brain/74.4.491 PMID: 14895767
- Seddon HJ. Three types of nerve injury. Brain. 1943;66:237-288.
- 日本神経治療学会ガイドライン作成委員会. 標準的神経治療:Bell麻痺. 神経治療学 2019;36(5):619-634.