CliniScale 臨床評価スケール情報
SPPB (下肢身体機能評価バッテリー)
詳細情報
このアプリは、CliniScaleで提供している臨床評価スケールの内容を説明するものです。
正確な情報については、必ず原典を参照してください。
業務でのご利用には、個人情報・個人データを侵害しないウェブ問診システムの
セキュア問診票
をご利用ください。
患者さんの個人データに、運営会社や第三者はアクセス不可能である、という点が最大の特徴です。
個人データの流出や営利目的の転用は絶対にありません！
基本情報
正式名称: Short Physical Performance Battery
日本語名: 下肢身体機能評価バッテリー
対象年齢: 高齢者（主に65歳以上）
評価目的: 下肢機能評価
実施時間: 約5-10分
開発背景
開発者: National Institute on Aging (NIA)
発行年: 1994年
理論的基盤: 高齢者の下肢機能と日常生活活動能力、死亡率、施設入所リスクとの関連
著作権・使用条件
原典の著作権に配慮し、評価項目と採点方法は公開されている学術情報に基づいて作成。NIAにより無料で使用可能。
パブリックドメイン
商用利用
可
許諾
不要
料金
無料
研修
不要
原開発者: Jack M. Guralnik et al. (1994)
日本語版: Japanese version validated; reference values
利用時の推奨事項
開発者を明記。ライセンス不要
尺度構成
全体構造
- 総項目数: 3つの機能テスト
- サブスケール数: 立位バランス、歩行、下肢筋力の3領域
- 評価方式: 各領域0-4点、合計0-12点
テスト詳細
1. 立位バランステスト - 4点満点
- 閉脚立位、セミタンデム立位、タンデム立位の段階的評価
- 各姿勢10秒間の保持能力を測定
- 採点基準:
- 閉脚立位10秒未満: 0点、10秒以上で次へ
- セミタンデム立位10秒未満: 1点、10秒以上で次へ
- タンデム立位: 3秒未満=2点、3-9.99秒=3点、10秒以上=4点
2. 歩行テスト - 4点満点
- 4m通常歩行速度の測定
- 2回実施し良い方の時間を採用
- 歩行補助具の使用可能
- 採点基準（NIA公式基準）:
- 実施不可: 0点
- 8.70秒超: 1点
- 6.21-8.70秒: 2点
- 4.82-6.20秒: 3点
- 4.82秒未満: 4点
3. 5回立ち上がりテスト - 4点満点
- 胸前で腕組みした状態での椅子からの立ち上がり
- 5回連続実施時間を測定
- 採点基準（NIA公式基準）:
- 実施不可または60秒超: 0点
- 16.70秒以上: 1点
- 13.70-16.69秒: 2点
- 11.20-13.69秒: 3点
- 11.19秒以下: 4点
信頼性・妥当性
信頼性
- 内的整合性: 高い信頼性（ICC 0.8以上）
- テスト再テスト信頼性: 優秀（ICC 0.83-0.89）
- 評定者間信頼性: 高い再現性（ICC 0.81-0.92）
妥当性
- 予測妥当性: 死亡率、入院リスク、ADL低下の予測因子として確立
- 併存妥当性: TUG、FBS等の他評価法との高い相関
- 構成概念妥当性: 因子分析により3つの独立した要素を確認
得点化・解釈
基本得点
各テスト0-4点、合計0-12点で算出。高得点ほど良好な下肢機能を示す。
機能レベルの目安
- 運動機能良好: 10-12点
- 中等度運動機能: 7-9点
- 低運動機能: 4-6点
- 極めて低運動機能: 0-3点
臨床的カットオフ値
- 9点以下: AWGS2019によるサルコペニア診断基準（身体機能低下）
- 10点未満: 全死因死亡率上昇のリスク
- 8点以下: 心血管疾患、骨折、転倒による入院リスク著明上昇
実施上の注意点
対象者
- 立位保持可能な高齢者
- 重篤な認知症や精神疾患がない者
- 安全に歩行可能な者
評価者
- 適切な安全配慮ができる医療従事者
- 測定手順の標準化が重要
- 検者間信頼性維持のための訓練必要
制限事項
- 身体機能が極度に低下した場合は床効果の影響
- 地域在住高齢者では天井効果（高機能者で満点になりやすい）
- 歩行補助具使用時の標準化の課題
参考文献
- Guralnik JM, et al. A short physical performance battery assessing lower extremity function: association with self-reported disability and prediction of mortality and nursing home admission. Journal of Gerontology. 1994;49(2):M85-M94. PMID: 8126356
- Chen LK, et al. Asian Working Group for Sarcopenia: 2019 Consensus Update on Sarcopenia Diagnosis and Treatment. J Am Med Dir Assoc. 2020;21(3):300-307. PMID: 32033882