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RASS (リッチモンド興奮・鎮静スケール)

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基本情報

正式名称: Richmond Agitation-Sedation Scale

日本語名: リッチモンド興奮・鎮静スケール

対象年齢: 成人(主に 18 歳以上)

評価目的: 鎮静評価

実施時間: 30-60 秒

開発背景

開発者: Curtis N. Sessler らのチーム(医師、看護師、薬剤師の共同開発)

発行年: 2002 年

理論的基盤: ICU 患者の鎮静管理における客観的評価の必要性

著作権・使用条件

原著論文は学術目的での使用が認められており、尺度自体は無料で利用可能

パブリックドメイン
原開発者: Sessler CN et al. (2002)
日本語版: Japanese version validated
利用時の推奨事項 自由に使用。引用

尺度構成

全体構造

  • 総項目数: 1 項目(10 段階評価)
  • サブスケール数: なし(単一スケール)
  • 評価方式: -5 から+4 までの 10 段階スケール

サブスケール詳細

1. 興奮レベル(+1 から+4)- 4 段階

  • +4: 極度に攻撃的(暴力的、スタッフに即座の危険)
  • +3: 非常に興奮(チューブ・カテーテルを引き抜く、攻撃的)
  • +2: 興奮(頻繁に目的のない動き、人工呼吸器と同調しない)
  • +1: 落ち着きなし(不安または軽い興奮があるが暴力的ではない)

2. 覚醒・落ち着き(0)- 1 段階

  • 0: 覚醒して落ち着いている

3. 鎮静レベル(-1 から-5)- 5 段階

  • -1: 傾眠(完全に覚醒していないが、呼名で 10 秒以上開眼し目を合わせる)
  • -2: 軽度鎮静(呼名で短時間開眼し目を合わせるが 10 秒未満)
  • -3: 中等度鎮静(呼名で動きや開眼があるが目を合わせない)
  • -4: 深度鎮静(呼名に反応しないが身体刺激で動きや開眼)
  • -5: 昏睡(音声や身体刺激に反応しない)

信頼性・妥当性

信頼性

  • 内的整合性: 該当なし(単一項目)
  • テスト再テスト信頼性: 良好(経時的変化の検出に有効)
  • 評定者間信頼性: 優秀(ICC = 0.956、κ = 0.73-0.91)

妥当性

  • 感度: 該当なし(診断ツールではない)
  • 特異度: 該当なし(診断ツールではない)
  • その他: 基準関連妥当性(視覚アナログスケールとの高い相関 r = 0.93)、構成概念妥当性(Ramsay Sedation Scale r = -0.78、Sedation Agitation Scale r = 0.78との相関)、併存的妥当性(CAM-ICU と組み合わせてせん妄評価に使用)

得点化・解釈

基本得点

観察による直接評価で-5 から+4 のスコアを付与

解釈の目安

  • +3 以上: 鎮静が必要な重度興奮状態(+4 は緊急対応)
  • +2: 中等度興奮、鎮静検討が必要
  • +1: 軽度興奮、痛み・不安・せん妄の評価が必要
  • 0: 理想的な覚醒・落ち着き状態
  • -1 から-2: 適切な軽度鎮静
  • -3 以下: 過度の鎮静、鎮静薬減量を検討

目標レベル

  • 一般的目標: -2 から+1(神経筋遮断薬使用時以外)
  • 最適目標: 0(覚醒・落ち着き)または-1(軽度傾眠)

実施上の注意点

対象者

  • 主に人工呼吸器装着患者
  • 一般的な入院患者でも使用可能
  • 重度の聴覚・視覚障害患者では適用困難

評価者

  • ICU 経験のある医療従事者
  • 事前研修により高い信頼性を確保
  • 多職種間での一貫した評価が可能

制限事項

  • 英語以外での妥当性検証が限定的
  • 小児患者での使用は別途検証が必要
  • 神経筋疾患患者では評価が困難な場合がある

参考文献

  • Sessler CN, Gosnell MS, Grap MJ, et al. The Richmond Agitation-Sedation Scale: validity and reliability in adult intensive care unit patients. Am J Respir Crit Care Med. 2002;166(10):1338-44
  • Ely EW, Truman B, Shintani A, et al. Monitoring sedation status over time in ICU patients: reliability and validity of the Richmond Agitation-Sedation Scale (RASS). JAMA. 2003;289(22):2983-91