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Modified Lanza (修正 Lanza スコア)

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基本情報

正式名称: Modified Lanza Score

日本語名: 修正 Lanza スコア

対象年齢: 制限なし(内視鏡検査が可能な患者)

評価目的: NSAID誘発潰瘍評価

実施時間: 内視鏡検査時間に依存(約 5-10 分)

開発背景

開発者: 小林絢三、水島裕(日本)

発行年: 1990 年

理論的基盤: 原典 Lanza score(1984年、Francis L. Lanza)の日本での臨床現状への適応改良版

著作権・使用条件

公的な医学的評価スケールとして広く使用されており、臨床現場での利用に関する著作権上の制約は特に確認されていません。

パブリックドメイン
原開発者: Lanza FL et al. (1991)
日本語版: Japanese GI use
利用時の推奨事項 原著を引用。自由に使用可能

尺度構成

全体構造

  • 総項目数: 1 項目(主要評価項目)
  • サブスケール数: なし
  • 評価方式: 0-5 の 6 段階評価

胃粘膜傷害評価詳細

Modified Lanza Score 分類

  • Grade 0: 正常または軽微な発赤
    • びらんなし、出血点なし
  • Grade 1: 2 個以下のびらんまたは出血点
    • 胃の 1 領域に限局
  • Grade 2: 3-5 個のびらんまたは出血点
    • 胃の 1 領域に限局
  • Grade 3: 複数領域のびらん、または 1 領域に 6-10 個
    • 2 領域のびらんまたは出血点、または
    • 1 領域に 6 個以上で全体 10 個以下
  • Grade 4: 多数のびらん、または急性潰瘍
    • 2 領域かつ多数のびらん、または
    • 11 個以上のびらん、または
    • 急性潰瘍
  • Grade 5: 慢性潰瘍
    • 明確な慢性潰瘍の存在

Original Lanza Score (1984) との違い

Original 版(5 段階: 0-4):

  • Grade 0: 正常
  • Grade 1: 粘膜出血のみ
  • Grade 2: 1-2 個のびらん
  • Grade 3: 多数(3-10 個)のびらん
  • Grade 4: 多数(10 個超)のびらんまたは潰瘍

Modified 版(6 段階: 0-5)の改良点:

  • より詳細なびらん個数の分類
  • 急性潰瘍と慢性潰瘍の区別(Grade 4 と Grade 5)
  • 胃の領域概念の導入
  • 用語の明確化

信頼性・妥当性

信頼性

  • 内的整合性: 単一項目評価のため該当なし
  • テスト再テスト信頼性: 急性変化を評価するスケールのため通常は測定されない
  • 評定者間信頼性: 内視鏡医間での評価一致性は良好とされる
    • 明確な定義により主観性を低減

妥当性

  • 臨床的妥当性: NSAID 関連胃粘膜傷害の評価において広く受け入れられている
    • 日本およびアジア諸国で広く使用
  • 内容妥当性: 原典 Lanza score の改良版として日本の臨床現状に適合
  • 構成妥当性: びらん個数と重症度との相関が確認されている
  • 使用実績: 1704 名の RA 患者を対象とした大規模研究で使用(PLoS One. 2018)
  • 多数の臨床試験で胃粘膜傷害評価の標準スケールとして採用
  • 日本消化器病学会関連のガイドラインで言及

得点化・解釈

基本得点

  • Grade 0-5 の直接評価(数値そのものがスコア)
  • スコアが高いほど重篤な粘膜傷害を示す

重症度の目安

  • 正常: Grade 0
    • 正常または軽微な発赤のみ
    • 臨床的に意味のある傷害なし
  • 軽度: Grade 1-2
    • Grade 1: 2 個以下のびらんまたは出血点
    • Grade 2: 3-5 個のびらんまたは出血点
    • 軽度の粘膜傷害
  • 中等度傷害: Grade 3
    • 複数領域のびらん、または 1 領域に 6-10 個
    • 治療介入の検討が必要
  • 重度傷害: Grade 4-5
    • Grade 4: 多数のびらんまたは急性潰瘍
    • Grade 5: 慢性潰瘍
    • 積極的な治療介入を要する

臨床的意義

  • Grade 2 以上: 臨床的に意味のある NSAID 関連胃粘膜傷害
    • PPI 等の胃粘膜保護薬の投与を検討
    • NSAID の変更または中止を検討
  • Grade 3 以上: 中等度以上の傷害
    • 治療介入が推奨される
    • フォローアップ内視鏡検査が必要
  • Grade 4 以上: 重篤な傷害
    • 緊急の治療介入を要する
    • NSAID の即時中止を検討
    • 出血や穿孔のリスク評価が必要

実施上の注意点

対象者

  • NSAID 使用患者(現在使用中または使用歴のある患者)
  • 内視鏡検査が実施可能な患者
  • 胃腸症状の有無は問わない(無症候性の傷害も評価対象)

評価者

  • 内視鏡検査の経験を有する医師
  • 胃粘膜病変の判定に習熟した医師
  • Modified Lanza Score の定義を理解している医師

制限事項

検査の性質:

  • 内視鏡検査を必要とするため侵襲的検査
  • 患者の同意と適切な前処置が必要

評価の主観性:

  • 主観的評価要素を含むため評価者による差異の可能性
  • びらんと潰瘍の区別が困難な場合がある
  • 複数領域の判定に個人差がある可能性

適用範囲:

  • 急性変化の評価が主体
  • 長期経過観察には適さない場合がある
  • NSAID 以外の原因による胃粘膜傷害の評価には適用外

併存疾患の影響:

  • H. pylori 感染の有無が評価に影響する可能性
  • 胃萎縮や腸上皮化生がある場合の評価が困難な場合がある
  • 他の薬剤(ステロイド等)の影響を考慮する必要がある

参考文献

  • Lanza FL, Nelson RS, Rack MF. A controlled endoscopic study comparing the toxic effects of sulindac, naproxen, aspirin, and placebo on the gastric mucosa of healthy volunteers. Journal of Clinical Pharmacology 24:89-95, 1984
  • 小林絢三、水島裕:Modified Lanza Score(1990 年)
  • Yanagawa A, Endo T, Nakagawa T, Mizushima Y. Prophylactic efficacy of ranitidine against gastroduodenal mucosal damages from nonsteroidal anti-inflammatory drugs: A randomized placebo-controlled study. R Soc Med. 1990:21:97-103
  • Tanigawa T, Watanabe T, Hamaguchi M, et al. The prevalence of endoscopic gastric mucosal damage in patients with rheumatoid arthritis. PLoS One. 2018;13(7):e0200023. PMID: 29969488; PMCID: PMC6037345