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MPQ (マギル痛み質問票、日本語版 McGill Pain Questionnaire (JMPQ))

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基本情報

正式名称: McGill Pain Questionnaire

日本語名: マギル痛み質問票、日本語版 McGill Pain Questionnaire (JMPQ)

対象年齢: 成人(18 歳以上)

評価目的: 疼痛質評価

実施時間: 5-15 分

開発背景

開発者: Ronald Melzack, Warren S. Torgerson

発行年: 1971 年(概念)、1975 年(完成版)

理論的基盤: Gate Control Theory、多次元疼痛理論

著作権・使用条件

原典論文の著作権に注意。日本語版は佐藤らの翻訳版に厳密準拠。臨床使用については各施設の倫理委員会での検討が推奨される。

情報なし
原開発者: Melzack (1975)
日本語版: Japanese version validated
利用時の推奨事項 許諾取得。検証済み日本語版を使用

尺度構成

全体構造

  • 総項目数: 76 語の痛み表現語 + Present Pain Intensity (PPI)
  • サブカテゴリー数: 20 サブカテゴリー(佐藤らの JMPQ 準拠)
  • 評価方式: 各サブカテゴリーから最大 1 語選択、強度ランク付け

カテゴリー詳細

感覚的側面 (Sensory) - サブカテゴリー 1-10

  1. 時間的特徴:ひらめく、震える、脈打つ、ずきずき、ドキドキ、がんがんする
  2. 発作的特徴:飛び跳ねる、一瞬走る、電撃的
  3. 刺激的圧迫:針で刺す、穿つ、きりで刺す、鋭く突き抜ける
  4. 切開的特徴:鋭い、切る、裂ける
  5. 収縮的圧迫:つまむ、押しつぶす、かみつく、締めつける、ぎゅっと握る
  6. 牽引的感覚:引っ張られる、引きちぎられる、ねじられる
  7. 熱的感覚:熱い、焼ける、焼けただれる、沸騰する
  8. 刺激的感覚:ちくちく、ひりひり、焼けつく、うずく
  9. 鈍い感覚:鈍い、重苦しい、重い、鉛のような
  10. 敏感性:過敏、ひりひり、割れる、ずきんずきん

感情的側面 (Affective) - サブカテゴリー 11-15

  1. 疲労感:疲れる、消耗する、衰弱させる
  2. 不快感:気分が悪くなる、窒息しそう
  3. 恐怖感:恐ろしい、ぞっとする、怖い
  4. 罰的感覚:懲らしめる、罰する、残酷、殺す、むごい
  5. みじめさ:みじめ、目がくらむ

評価的側面 (Evaluative) - サブカテゴリー 16

  1. 全体的強度:軽い、不快、苦しい、ひどい、耐えられない

その他 (Miscellaneous) - サブカテゴリー 17-20

  1. 広がり・浸透性:広がる、放散する、貫通する、突き抜ける
  2. 締めつけ感:きつい、しびれる、締めつける、裂ける、引き裂く
  3. 冷たさ:冷たい、冷える、凍る
  4. 持続的不快感:つきまとう、苦しめる、拷問、責めさいなむ

信頼性・妥当性

信頼性

  • 内的整合性: Cronbach's α = 0.84 (日本語版総合スコア)
  • テスト再テスト信頼性: r > 0.70
  • 評定者間信頼性: r = 0.93

妥当性

  • 併存妥当性: VAS、VRS、NRS との有意な相関
  • 構成妥当性: 長谷川らの確認的因子分析で感覚的、感情的、評価的因子を確認(92%の分散説明)
  • 判別妥当性: 異なる疼痛症候群の識別可能

得点化・解釈

基本得点

  • Pain Rating Index (PRI): 各カテゴリーの選択語の強度値合計
  • PRI-S: 感覚的側面スコア(サブカテゴリー 1-10)
  • PRI-A: 感情的側面スコア(サブカテゴリー 11-15)
  • PRI-E: 評価的側面スコア(サブカテゴリー 16)
  • PRI-M: その他スコア(サブカテゴリー 17-20)
  • PRI-T: 総合スコア (0-76 点)
  • Number of Words Chosen (NWC): 選択語数
  • Present Pain Intensity (PPI): 0-5 の 6 段階現在痛み強度(佐藤らの JMPQ では 0=痛みなしを追加)

重症度の目安

  • 軽度: PRI-T 0-11 点
  • 中等度: PRI-T 12-24 点
  • 重度: PRI-T 25 点以上

実施上の注意点

対象者

  • 慢性疼痛患者(6 か月以上の痛み)
  • 語彙理解能力のある成人
  • 日本語での表現理解可能な患者

評価者

  • 医療従事者による実施推奨
  • 語彙の説明が可能な評価者
  • 痛み評価の経験があることが望ましい

制限事項

  • 急性痛よりも慢性痛での妥当性が高い
  • 文化的・言語的背景による影響
  • 高齢者や認知機能低下例では注意が必要

参考文献

  • Melzack R. The McGill Pain Questionnaire: major properties and scoring methods. Pain 1975; 1(3): 277-299. PMID: 1235985
  • 佐藤陽子ら. 痛み質問紙の開発—McGill Pain Questionnaire (MPQ) の作成と検証. 看護研究 1995; 28(2): 133-141
  • 長谷川守ら. 日本語版 McGill Pain Questionnaire の信頼性と妥当性の検討. 日本ペインクリニック学会誌 1996; 3(2): 85-91
  • Hasegawa M, et al. The McGill Pain Questionnaire, Japanese version, reconsidered: confirming the theoretical structure. Pain Med 2001; 2(1): 52-59. PMID: 11854762