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House-Brackmann (House-Brackmann顔面神経麻痺分類)

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基本情報

正式名称: House-Brackmann Facial Nerve Grading System

日本語名: House-Brackmann顔面神経麻痺分類

対象年齢: 全年齢

評価目的: 顔面神経麻痺重症度評価

実施時間: 3-5分

開発背景

開発者: Dr. John W. House, Dr. Derald E. Brackmann(ロサンゼルスの耳鼻咽喉科医師)

発行年: 1985年

理論的基盤: 顔面神経機能の客観的評価の標準化

著作権・使用条件

House-Brackmann分類は、1985年にDr. John W. HouseとDr. Derald E. Brackmannによって開発された顔面神経機能評価システムで、現在は医学界の標準的評価法として広く使用されています。American Academy of Otolaryngology-Head & Neck Surgery(米国耳鼻咽喉科頭頸部外科学会)により公式に承認されています。

パブリックドメイン
原開発者: House JW, Brackmann DE (1985)
日本語版: Japanese otology use
利用時の推奨事項 自由に使用。引用

尺度構成

全体構造

  • 総グレード数: 6段階(I-VI)
  • 評価要素: 3要素(安静時・動作時・全体印象)
  • 評価方式: 総合的観察評価

安静時の評価(At Rest)- 2段階

  • 対称性の観察
  • 筋緊張の評価
  • 正常または非対称の2段階

動作時の評価(Motion)- 各部位3-4段階

額(Forehead)

  • 正常
  • 中等度から良好な機能
  • わずかから中等度の動き
  • 動きなし

眼(Eye)

  • 正常(努力なく完全閉眼)
  • 最小努力で完全閉眼
  • 努力により完全閉眼
  • 不完全閉眼

口(Mouth)

  • 正常
  • わずかな非対称
  • 最大努力でわずかな脱力
  • 最大努力で非対称
  • わずかな動き

全体印象(Gross)

顔面全体を観察した総合的印象:

  • 正常
  • わずかな脱力(注意深い観察で判別可能)
  • 明らかだが醜形を伴わない
  • 明らかな脱力または醜形
  • わずかに知覚可能な動きのみ
  • 動きなし

信頼性・妥当性

信頼性

  • 評価者間信頼性: 高い信頼性があるとされるが、個別グレードでは評価者間にばらつきあり(House JW et al. 1985)
  • 内的整合性: 総合評価のため単一指標

妥当性

  • 国際標準: 世界的に最も広く使用される顔面神経機能評価法
  • 臨床的妥当性: American Academy of Otolaryngology-Head & Neck Surgeryにより標準として承認(1985年)
  • 感度: 6段階のため細かな変化を捉えにくいという限界あり

得点化・解釈

グレード判定基準詳細

Grade I - 正常

  • 全体: すべての領域で正常な顔面機能
  • 安静時: 正常な対称性と筋緊張
  • 動作時: すべて正常

Grade II - 軽度機能障害

  • 全体: わずかな脱力、注意深く観察すれば分かる程度、わずかな病的共同運動の可能性
  • 安静時: 正常な対称性と筋緊張
  • 動作時: 額は中等度から良好な機能、眼は最小努力で完全閉眼、口はわずかな非対称

Grade III - 中等度機能障害

  • 全体: 明らかだが醜形を伴わない両側の違い、軽度から中等度の病的共同運動・拘縮・顔面痙攣
  • 安静時: 正常な対称性と筋緊張
  • 動作時: 額はわずかから中等度の動き、眼は努力により完全閉眼、口は最大努力でわずかな脱力

Grade IV - やや高度機能障害

  • 全体: 明らかな脱力または醜形を伴う非対称
  • 安静時: 正常な対称性と筋緊張
  • 動作時: 額は動きなし、眼は不完全閉眼、口は最大努力で非対称

Grade V - 高度機能障害

  • 全体: わずかに知覚可能な動きのみ
  • 安静時: 非対称
  • 動作時: 額は動きなし、眼は不完全閉眼、口はわずかな動き

Grade VI - 完全麻痺

  • 全体: 動きなし
  • 安静時: 非対称
  • 動作時: すべて動きなし

重症度の目安

  • Grade I: 正常機能
  • Grade II: 軽症 - 外来経過観察
  • Grade III: 中等症 - 積極的治療適応
  • Grade IV-VI: 重症 - 外科的治療検討

実施上の注意点

対象者

  • 顔面神経麻痺患者(原因を問わず)
  • Bell麻痺、Ramsay Hunt症候群、聴神経腫瘍術後など

評価者

  • 神経内科医、脳神経外科医、耳鼻咽喉科医
  • 顔面神経麻痺の診療経験が重要
  • 評価は総合的観察に基づく

制限事項

  • 6段階のみで細かな変化を捉えにくい
  • 病的共同運動の詳細評価は限定的
  • 顔面の部位別差異を十分反映しない
  • 主観的評価のため評価者の経験に依存
  • 日本では40点法(柳原法)も併用されることが多い

参考文献

  • House JW, Brackmann DE. Facial nerve grading system. Otolaryngol Head Neck Surg. 1985;93(2):146-7. PMID: 3921901
  • Coulson SE, et al. Reliability of the "Sydney," "Sunnybrook," and "House Brackmann" facial grading systems to assess voluntary movement and synkinesis after facial nerve paralysis. Otolaryngol Head Neck Surg. 2005;132(4):543-9.