Fisher分類 (Fisher分類(くも膜下出血CT分類))
詳細情報
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基本情報
正式名称: Fisher Classification
日本語名: Fisher分類(くも膜下出血CT分類)
対象年齢: 成人(主に40-70歳代に多いくも膜下出血患者)
評価目的: くも膜下出血CT分類
実施時間: 約5-10分(CT画像評価時間)
開発背景
開発者: C. Miller Fisher, J. Paul Kistler, John M. Davis
発行年: 1980年
理論的基盤: CT画像上のくも膜下出血量と分布、脳血管攣縮発生の相関関係
著作権・使用条件
Fisher分類は1980年に発表された医学的分類システムであり、学術的使用においては一般的に使用されています。
パブリックドメイン
商用利用
可
許諾
不要
料金
無料
研修
不要
原開発者: Fisher CM et al. (1980)
日本語版: Japanese neurology use
利用時の推奨事項
自由に使用。引用
尺度構成
全体構造
- 総項目数: 4つのGroup(Group 1-4)
- サブスケール数: なし(単一の分類システム)
- 評価方式: CT画像所見に基づく4段階分類(Group分類であり、Grade分類ではない)
Group詳細
Group 1 - CT上出血なし
- 明らかなくも膜下出血を認めない
- 脳血管攣縮リスクは最低(約0-5%)
Group 2 - 薄いびまん性出血
- くも膜下腔に1mm以下の薄い出血をびまん性に認める
- 軽度〜中等度の脳血管攣縮リスク(約15-20%)
Group 3 - 厚いびまん性出血または局所性血腫
- くも膜下腔に1mmを超える厚い出血をびまん性に認める、または局所性血腫(localized clot)を認める
- 脳血管攣縮リスクが最も高い(約30-35%)
- 重要: Group 1-4の中で最も脳血管攣縮リスクが高い
Group 4 - 脳内・脳室内血腫合併(SAHなしまたは軽度)
- くも膜下出血はないか軽度(びまん性の薄い出血)で、脳内血腫または脳室内血腫を伴う
- Group 1-2のサブグループと位置づけられる
- 脳血管攣縮リスクはGroup 1-2と同程度(約0-15%)
- 重要: 全SAH患者の10-15%未満を占める(30-40%を超える場合は誤解釈の可能性)
信頼性・妥当性
信頼性
- 内的整合性: 該当なし(分類システムのため)
- テスト再テスト信頼性: 該当なし(分類システムのため)
- 評定者間信頼性: 中等度から良好(κ値0.90程度との報告あり)
妥当性
- 感度: Group 3で最も高い予測能力
- 特異度: 該当なし(リスク予測システムのため)
- その他: 臨床的意義 - 治療方針決定・集中治療の必要性判断に広く使用される。制限 - 厚い出血と薄い出血の境界判定が主観的になる可能性
得点化・解釈
基本分類
- Group 1から4までの分類
- 注意: 数値が高いほど重症というわけではない(Group 3が最高リスク、Group 4は低リスク)
脳血管攣縮リスクの目安
- Group 1: 低リスク(約0-5%)
- Group 2: 中等度リスク(約15-20%)
- Group 3: 高リスク(約30-35%) ← 最高リスク
- Group 4: 低〜中等度リスク(約0-15%)
重要な解釈上の注意
- Fisher分類は脳血管攣縮の発生予測が目的であり、予後予測ではない
- Group番号の高低と重症度・予後は必ずしも相関しない
- Group 3が最も脳血管攣縮リスクが高く、Group 4はGroup 1-2と同程度のリスク
- Group 4の解釈には特に注意が必要(しばしば誤解される)
Modified Fisher Scaleとの違い
Modified Fisher Scale(2006年、Frontera et al.)
- Grade 0-4の5段階評価(Fisherとは異なりGrade分類)
- Grade 0: SAHなし
- Grade 1: 薄いSAH、脳室内出血なし
- Grade 2: 薄いSAH、脳室内出血あり
- Grade 3: 厚いSAH、脳室内出血なし
- Grade 4: 厚いSAH、脳室内出血あり
主な相違点
- 分類基準が完全に異なる: 原典Fisher Group 4とModified Fisher Grade 4は全く異なる
- 段階数: Fisher 4段階(Group 1-4)、Modified Fisher 5段階(Grade 0-4)
- 脳室内出血の扱い: Fisherでは脳室内出血はGroup 4の一要素、Modified Fisherでは全Gradeで独立した判定基準
- リスク増加パターン: FisherはGroup 3が最高リスク、Modified FisherはGrade 4が最高リスク
重要: 2つのシステムを混同しないこと。論文等で使用する際は必ず明示すること。
実施上の注意点
対象者
- 動脈瘤性くも膜下出血患者に限定
- 発症後48時間以内の単純CT評価が原則(72時間以内や5日以内も使用される)
- 非動脈瘤性SAH(perimesencephalic SAHなど)では予測能が異なる可能性
評価者
- 脳神経外科医、救急医、放射線科医など
- CT画像読影の十分な経験が必要
- 厚い出血と薄い出血の境界判定には経験が重要
制限事項
- 脳血管攣縮の発生予測が目的(予後予測ではない)
- Group番号の高低と重症度は必ずしも相関しない
- Group 4の解釈には注意が必要(厚いSAH+脳室内出血はGroup 3であり、Group 4ではない)
- 画像解像度の向上により、原典(1980年代のCT)と現代のCTでは評価精度が異なる
参考文献
- 原典論文: Fisher CM, Kistler JP, Davis JM. Relation of cerebral vasospasm to subarachnoid hemorrhage visualized by computerized tomographic scanning. Neurosurgery. 1980 Jan;6(1):1-9. PMID: 7354892
- Group 4の正しい理解: Komiyama M. Misunderstanding of Fisher's Grouping System for Computed Tomography Evaluation of Aneurysmal Subarachnoid Haemorrhage. Interv Neuroradiol. 2019;25(6):653-4. PMID: 31116074
- Modified Fisher Scale: Frontera JA, Claassen J, Schmidt JM, et al. Prediction of symptomatic vasospasm after subarachnoid hemorrhage: the modified Fisher scale. Neurosurgery. 2006 Jul;59(1):21-7. PMID: 16823296
- Claassen J, Bernardini GL, Kreiter K, et al. Effect of cisternal and ventricular blood on risk of delayed cerebral ischemia after subarachnoid hemorrhage: the Fisher scale revisited. Stroke. 2001;32(9):2012-20. PMID: 11546890