FACT-G (がん治療機能評価尺度 - 一般版)
詳細情報
このアプリは、CliniScaleで提供している臨床評価スケールの内容を説明するものです。
正確な情報については、必ず原典を参照してください。
業務でのご利用には、個人情報・個人データを侵害しないウェブ問診システムの
セキュア問診票
をご利用ください。
患者さんの個人データに、運営会社や第三者はアクセス不可能である、という点が最大の特徴です。
個人データの流出や営利目的の転用は絶対にありません!
基本情報
正式名称: Functional Assessment of Cancer Therapy-General
日本語名: がん治療機能評価尺度 - 一般版
対象年齢: 成人(18歳以上)のがん患者
評価目的: がん機能評価
実施時間: 約5-10分
開発背景
開発者: David F. Cella(ノースウェスタン大学)
発行年: 1993年
理論的基盤: 多次元QOL理論(身体・社会・心理・機能面)
著作権・使用条件
Copyright 1987, 1997 by David Cella, Ph.D.
情報なし
商用利用
不可
許諾
必要
料金
無料
研修
不要
原開発者: Cella DF et al. (1993)
日本語版: Japanese version by Fumimoto H et al. (1995)
利用時の推奨事項
FACITにライセンス連絡。引用。非営利利用は無料
尺度構成
全体構造
- 総項目数: 27項目
- サブスケール数: 4つ
- 評価方式: 5段階リッカート尺度(0-4点)
サブスケール詳細
1. 身体面(Physical Well-Being, PWB) - 7項目
- 体力・エネルギーレベル
- 吐き気・痛みなどの身体症状
- 治療副作用
- 日常生活における身体的負担
- 注意: 全7項目が否定的表現のため、スコアリング時に逆転処理が必要
2. 社会・家族面(Social/Family Well-Being, SWB) - 7項目
- 家族・友人との親密感
- 精神的・実際的サポート
- 病気受容に関する家族の反応
- 性生活への満足度
- 注意: 逆転処理不要(全項目が肯定的表現)
3. 心理面(Emotional Well-Being, EWB) - 6項目
- 悲しみ・不安などの感情
- 病気受容への態度
- 死や病気進行への心配
- 希望感
- 注意: GE2(病気を冷静に受け止めている自分に満足している)以外の5項目は否定的表現のため逆転処理が必要
4. 機能面(Functional Well-Being, FWB) - 7項目
- 仕事・家事能力
- 生活の楽しみ・満足感
- 睡眠の質
- 娯楽・余暇活動
- 注意: 逆転処理不要(全項目が肯定的表現)
信頼性・妥当性
信頼性
- 内的整合性: α=0.89(FACT-G全体)、各下位尺度α=0.63-0.96
- テスト再テスト信頼性: r=0.82-0.92
- 評定者間信頼性: 患者自己評価のため該当なし
妥当性
- 感度: 病期・Performance Status・入院状況による弁別可能
- 特異度: 他のQOL尺度との適切な相関
- その他: 因子分析により4因子構造を確認、多施設検証済み
得点化・解釈
基本得点方式
FACT-Gでは、高得点が良好な状態を示すように設計されています。そのため、否定的な表現の項目は逆転処理が必須です。
逆転処理が必要な項目
- PWB(身体面): GP1, GP2, GP3, GP4, GP5, GP6, GP7(全7項目)
- 逆転方法: 逆転スコア = 4 - 回答値
- EWB(心理面): GE1, GE3, GE4, GE5, GE6(5項目)
- GE2は肯定的表現のため逆転不要
- 逆転方法: 逆転スコア = 4 - 回答値
- SWB(社会・家族面): 逆転不要(全7項目が肯定的表現)
- FWB(機能面): 逆転不要(全7項目が肯定的表現)
スコア計算手順
- 各項目を0-4点で採点
- 逆転項目(PWB全項目、EWB 5項目)を逆転処理: 4 - 回答値
- 各下位尺度の合計を算出
- 全下位尺度の合計でFACT-G総合計を算出
各下位尺度得点範囲
- 身体面(PWB): 0-28点(逆転処理後)
- 社会・家族面(SWB): 0-28点
- 心理面(EWB): 0-24点(逆転処理後)
- 機能面(FWB): 0-28点
- FACT-G総合計: 0-108点(高得点ほど良好なQOL)
スコア解釈の注意点
FACT-Gの解釈は、以下の点を考慮する必要があります:
- 集団規準の使用: がん種別、治療段階、地域などの集団特性に応じた規準値を参照することが推奨されます
- 臨床的意義のある変化: 5-7点の変化が臨床的に意義のある変化とされています
- 個別評価: 総合得点だけでなく、各下位尺度のプロフィールを評価することが重要です
- 固定カットオフの限界: 一律のカットオフ値での判断は推奨されません
実施上の注意点
対象者
- がん診断を受けた成人患者
- 認知機能に問題のない患者
- 日本語での読み書きが可能な患者
評価者
- 訓練を受けた医療従事者による実施推奨
- 患者のプライバシーに配慮した環境での実施
- 性生活に関する項目(GS7)は任意回答として配慮
- この項目は研究で高率(25%以上)に未回答となることが知られています
制限事項
- がん種特異的評価には追加モジュールが必要
- 文化的背景の違いによる回答傾向への注意
- 重篤な状態の患者では実施困難な場合あり
参考文献
- Cella DF, Tulsky DS, Gray G, et al. The Functional Assessment of Cancer Therapy scale: development and validation of the general measure. Journal of Clinical Oncology. 1993;11(3):570-579.
- 下妻晃二郎、江口成美. がん患者用QOL尺度の開発と臨床応用(I). 日医総研ワーキングペーパー No.56, 2001年11月