FAB (前頭葉機能評価バッテリー)
詳細情報
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基本情報
正式名称: Frontal Assessment Battery
日本語名: 前頭葉機能評価バッテリー
対象年齢: 成人(高齢者での使用が多い)
評価目的: 前頭葉機能評価
実施時間: 約10分
開発背景
開発者: Duboisらのグループ
発行年: 2000年
理論的基盤: 前頭葉の6つの主要機能領域
著作権・使用条件
原著論文: Dubois B, Slachevsky A, Litvan I, Pillon B. The FAB: a Frontal Assessment Battery at bedside. Neurology. 2000 Dec 12;55(11):1621-6.
情報なし
商用利用
可
許諾
必要
料金
有料
研修
不要
原開発者: Bruno Dubois et al. (2000)
日本語版: Japanese version validated by Nakaaki et al. (2007)
利用時の推奨事項
Mapiに連絡してライセンス取得。引用を含める
尺度構成
全体構造
- 総項目数: 6項目
- サブスケール数: 6つの独立した機能評価
- 評価方式: 各項目0-3点の4段階評価、合計18点満点
下位検査詳細
1. 類似性(概念化) - 3点満点
- 抽象的思考・概念化能力の評価
- バナナとオレンジ、テーブルとイス、チューリップとバラとキクの類似点を答える
- 上位概念の抽出能力を測定
2. 語の流暢性(知的柔軟性) - 3点満点
- 言語想起・戦略的思考の評価
- 60秒間で「か」から始まる言葉をできるだけ多く答える
- 10語で終了、人名・地名は除外
3. 運動系列(運動プログラミング) - 3点満点
- 運動プログラミング・模倣能力の評価
- Luria系統動作(拳-刀-掌)の実行
- 検者の模倣から独立実行への移行を評価
4. 葛藤指示(干渉刺激に対する敏感さ) - 3点満点
- 干渉刺激への対応能力の評価
- 「1回叩いたら2回」「2回叩いたら1回」のルール実行
- 習慣的反応の抑制能力を測定
5. Go/No-Go課題(抑制コントロール) - 3点満点
- 運動抑制・保続の評価
- 「1回叩いたら1回」「2回叩いたら叩かない」のルール実行
- 行動の開始と停止の制御を測定
6. 把握行動(環境に対する被影響性) - 3点満点
- 環境刺激への自律性の評価
- 「手を握らないでください」の指示下での反応抑制
- 原始反射の出現を評価
信頼性・妥当性
信頼性
- 内的整合性: Cronbach's α = 0.715
- テスト再テスト信頼性: r = 0.769
- 評定者間信頼性: r = 0.972
妥当性
- 感度: 85%(前頭側頭型認知症とアルツハイマー病の鑑別)
- 特異度: 92%(カットオフ10点での日本人データ)
- その他: MMSE (r=0.725)、WCSTと良好な相関
得点化・解釈
基本得点
各項目0-3点で評価し、6項目の合計点(0-18点)を算出
判定の目安
- 正常範囲: 12点以上
- 前頭葉機能低下: 11点以下
- 年齢考慮: 60代は12点以下、70代は10点以下で低下とする報告もあり
重症度分類
- 軽度: 15-18点
- 中等度: 12-14点
- 重度: 8-11点
- 最重度: 7点以下
実施上の注意点
対象者
- 前頭葉機能障害が疑われる患者
- 認知症、パーキンソン病、脳血管疾患患者
- 高次脳機能障害患者
評価者
- 神経心理学的検査の知識を有する医療従事者
- 作業療法士、臨床心理士、医師が実施
- 標準化された手順の遵守が必要
制限事項
- 側頭葉機能障害でも得点低下することがある
- 「FAB低得点 ≠ 前頭葉機能障害」という限界
- スクリーニング検査としての位置づけ
- 運動障害や言語障害が結果に影響する可能性
参考文献
- Dubois B, et al. The FAB: a Frontal Assessment Battery at bedside. Neurology. 2000;55(11):1621-6.
- 小野剛. 簡単な前頭葉機能テスト. 脳の科学. 2001;23:487-493.