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ADAS-Cog (アルツハイマー病評価尺度-認知行動-日本語版 (ADAS-COG-J))

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基本情報

正式名称: Alzheimer's Disease Assessment Scale-Cognitive

日本語名: アルツハイマー病評価尺度-認知行動-日本語版 (ADAS-COG-J)

対象年齢: 成人(主に65歳以上の高齢者)

評価目的: アルツハイマー病認知機能評価

実施時間: 30-40分

開発背景

開発者: Richard C. Mohs, William G. Rosen, Kenneth L. Davis

発行年: 1984年

理論的基盤: アルツハイマー病の認知機能障害の特徴的パターンに基づく

著作権・使用条件

ADAS-Cogは研究・臨床目的での使用が広く認められている評価尺度ですが、商用利用については権利者への確認が必要です。日本語版は本間昭らにより作成され、学術・医療現場での使用実績があります。

情報なし
原開発者: Wilma Rosen et al. (1984)
日本語版: Japanese version validated; studies by Homma et al.
利用時の推奨事項 権利者に連絡。引用を含める。Webアプリでは許諾取得

尺度構成

全体構造

  • 総項目数: 11項目
  • サブスケール数: 3領域(記憶、言語、行為)
  • 評価方式: 0-70点(高得点ほど重症)

サブスケール詳細

1. 記憶領域 - 3項目

  • 単語再生 (Word Recall): 10語の即時再生(失敗語数で評価)
  • 単語再認 (Word Recognition): 12語の再認課題(エラー数、最大12点)
  • 検査教示の記憶: 課題教示の保持能力(再説明回数で評価)

2. 言語領域 - 4項目

  • 命名 (Naming): 物品・身体部位の命名(12物品+5指)
  • 話し言葉の理解: 受容性言語機能
  • 自発話での語想起困難: 表出性言語機能
  • 話し言葉能力: 言語の明瞭性・流暢性

3. 行為領域 - 4項目

  • 命令実行 (Commands): 段階的命令の実行(5命令)
  • 構成行為 (Constructional Praxis): 図形模写(4図形)
  • 観念運動 (Ideational Praxis): 複雑動作の実行(5段階の手紙作業)
  • 見当識 (Orientation): 時・場所・人の見当識(8項目)

信頼性・妥当性

信頼性

  • 内的整合性: α = 0.80-0.90
  • テスト再テスト信頼性: r = 0.91(6週間間隔)
  • 評定者間信頼性: ICC = 0.82-0.91

妥当性

  • 感度: アルツハイマー病の検出において高い感度
  • 特異度: 健常高齢者との弁別において良好
  • その他: MMSE、CDRとの収束的妥当性が確認されている

得点化・解釈

基本得点

各項目の誤答数を合計し、0-70点で評価。得点が高いほど認知機能障害が重度。

スコアリングの詳細

  • 単語再生: 3回試行の平均失敗語数(0-10点)
  • 単語再認: エラー数(最大12点、ランダム推測レベル)
  • その他項目: 各項目の失敗・エラー数に応じた段階的評価

解釈上の重要な注意事項

ADAS-Cogの総得点は認知機能の参考指標として活用されますが、以下の点に十分ご注意ください:

診断上の制限事項

  • 単独での診断確定は不適切: ADAS-Cogスコアのみで診断を確定してはなりません
  • 総合的判断が必須: 他の神経心理学的検査、画像検査、臨床症状、病歴等との総合的な評価が不可欠
  • 専門医による解釈: 結果の解釈には認知症専門医による臨床的判断が必要

個人差・背景要因の影響

  • 教育歴による影響: 学歴により成績に差が生じる可能性があります
  • 文化的背景: 言語・文化的背景により結果が影響を受ける場合があります
  • 年齢による変動: 加齢による生理的変化の影響を考慮する必要があります
  • 身体的要因: 視力・聴力・運動機能の制約が成績に影響する可能性があります

経時的変化の重要性

  • 単回測定の限界: 一度の測定より複数回の評価による変化の追跡が重要
  • 自然経過: 中等度ADで年間9-11点の悪化が報告されています
  • 治療効果判定: 薬剤効果判定には長期的な観察が必要

実施上の注意点

対象者

  • アルツハイマー病が疑われる患者
  • 認知症治療薬の効果判定対象者
  • 研究・治験参加者

評価者

  • 神経心理学的検査の訓練を受けた専門家
  • 医師、心理士、言語聴覚士、作業療法士、理学療法士
  • ADAS-Cog認定資格の取得が推奨される
  • FDA Administration Manualに従った標準化された実施が必須

制限事項

  • 検査時間が長いためスクリーニング検査には不適
  • 教育年数・文化的背景の影響を受ける可能性
  • 軽度認知症や軽度認知障害では天井効果が生じやすい
  • 重度の認知症では床効果により変化を検出しにくい可能性
  • 評価者間の信頼性確保が重要
  • 定期的な評価者訓練の実施
  • 標準化された環境での実施

参考文献

  • Rosen WG, Mohs RC, Davis KL. A new rating scale for Alzheimer's disease. Am J Psychiatry. 1984;141:1356-1364
  • 本間昭, et al. Alzheimer's Disease Assessment Scale (ADAS) 日本版の作成. 老年精神医学雑誌. 1992;3:647-655